文学

三島由紀夫と『豊穣の海』「春の雪」日本国精神の継続性

2018年2月25日



美しいが故に短い命を尊ぶこの国の心。

若い命が散ることに至高の美を感じる。

現代に於いて決してあってはならないことになった。

太平洋戦争で米国から若者の早い死を許されざる者とされた。

その以前の物語である。

 

 

皇国を再生した維新後の日本

 

激しい恋愛を春の雪に例えた

 

桜の花でもその短さに於いては美しさの至高だ。

深くストーリー性を語り問う小説ではない。

徳川の治世が終わり、プロイセンを模倣した。

西国から来た政府要人は憲法を生み出し欧米列強に対して急ごしらえの明治政府を築いて来た。

強いてここで語るならば欧州での第一次世界大戦後である。

この国は輸入出来なくなった機械を作る為、重化学工業のプラントを造り上げ急速に力を付け始めていた。

 

しかし、欧州の戦争も終焉を迎え各国は兵器の生産から生活必需品などの生産機械を再び輸出し始めた。

1919年パリ講和会議では唯一東洋から日本が五大国の中に入りその会議を主導した。

第一次世界大戦が1914年から1918年とすれば大正時代は1912年から1926年である。

 

そのような時代背景を思い浮かべこの小説を読み進んで欲しい。

軍艦を所有し、欧米列強と肩を並べていた。

この物語にはタイ王国の王子も描かれている。

タイ王国もまた占領、植民地化を免れた国であった。

そのような時代背景を昭和と共に産声を上げた三島は自身の経験も踏まえ描いている。

貴族や華族には殖産興業は身近ではなかった。

ここに野麦峠が出て来たら話はつまらなくなる。

大竹しのぶさんには似つかわしくない物語である。(個人的な思いである。)

まだまだ恋愛などが似つかわしくない時代。

 

多くの若者が異性を前にしてどのように対処すべきか学ぶ術のない時代の話なのだ。

だから尚更、清顕、聡子へのその場その場の誤解や無理無体な対応が愛おしく思うのは私だけであろうか。

「潮騒」とはまた違った愛おしさを語り伝えたかったのだ。

 

それは成就するのではなく空気中に結晶しては直ぐに溶ける「春の雪」

 

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作家、小説家が創造する出発点

 

この小説との因果関係はない。

ただ、三島さんも「潮騒」を書く切っ掛けとなった話は古代ギリシャ散文作品「ダフニスとクロエ」がヒントとなっている。古代ギリシャが育んだ叙事詩のスケールの大きさを改めて思い知る。

あらゆる作家の原点にギリシア神話が何処かで、気付かないところでも関係している。

 

それが映画になるのは寂しい限りである。

そして三島さんが選定した時代背景もまた文学を始め多くの先駆者を輩出した時代でもある。

北原白秋、フランス近代詩、丸山薫、草野心平、ワイルド、谷崎潤一郎、ラディゲラディゲ、ワイルド、ジャン・コクトー、リルケ、トーマス・マン、ラフカディオ・ハーン、エドガー・アラン・ポー、リラダン、モオラン、ボードレール、メリメ、ジョイス、プルースト、カロッサ、ニーチェ、泉鏡花、芥川龍之介、志賀直哉、中原中也、田中冬二、立原道造、宮沢賢治、稲垣足穂、室生犀星、佐藤春夫、堀辰雄、伊東静雄、保田與重郎、梶井基次郎、川端康成、郡虎彦、森鴎外の戯曲、浄瑠璃、『万葉集』『古事記』『枕草子』『源氏物語』『和泉式部日記』

このような数多の言葉の名手と慣れ親しむことでそれらが三島の思考を通じまた新たな言葉となって紡ぎ出されている。

上記の蒼々たる人材に触れることやその人材が維新後の日本の精神を磨き上げてきた。

 

愛することは死をも厭わぬ事なのか

 

三島も傾倒したギリシャ神話では『ヘレネがトロイアの王子パリスに誘拐されてトロイア戦争が始まった。』

女性を誘拐され20年にも及ぶ戦争をすることも異常だ。そのことが原因で戦争になったかどうかは疑わしい。

安易な気持ちで訪れても聡子は会ってくれない。だから敢えて雪が降る中を訪れる。

そこで危篤状態になってもその身を案じて出てこない聡子の気持ちも現代的考え方ではおかし過ぎる。

しかし、そんな永遠の拒絶を決意するそんな時代背景がそこにはあった。

想像を絶する清顕の真っ直ぐな思いを深く受け止めたはずの聡子が何故、急にその門を閉ざすのか。

そして二度と会わないと言う決意は死を意味する。

 

その時に自分にとってかけがえのない人の死は心に刻まれ永久に消すことが出来ない。

この経験のないものには決して解ることが出来ない気持ちだ。

つまり親より先に子が死んでしまうような理不尽なことが起きればその辛さが解る。

 

理不尽こそ偉大な国家への道のりか

 

維新後の成長スピードが異常に早かった。

その得意満面さが甘さであり敗戦を迎える。

そんなあってはならないことが起こってしまう浮世なのだ。

『春の雪』そのものがあたかも桜のように散っていく。

 

だからこそ何時までも美しく心に刻まれる。

蓋し、三島さんはそこを狙って書いている。

 

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